中央競馬ではダービーや有馬記念のようなG1レースをはじめ、メインレースや特別戦などが行われる平地レースのほかに、障害を飛び越えながらレースを行う障害レースが開催されています。
障害レースでは、近年では「オジュウチョウサン」というスターホース誕生しました。
ヨーロッパ地域では平地レース以上の人気を誇る障害レースですが、日本ではそれほどの人気はなく、どちらかというとサブ的な扱いを受けることも多いです。
今回はそんな障害レースにスポットを当てていきます。

Contents
障害レースの基本情報とその魅力。1.5mほどの障害物を颯爽と飛ぶ馬たち。
普段は平地レースしか見ないという方のために、まずは障害レースの基本情報をおさらいしていきます。
障害レースは北海道の2場以外の競馬場で開催されています。
クラス分けも非常に単純で、障害レースで勝利経験がない馬を「未勝利クラス」、1勝以上している馬を「オープンクラス」として扱い、非常にわかりやすいクラス分けとなっています。
障害レースのコースは非常に長く、大半のレースは、3000m以上のコースで行われます。
障害物にもよりますが、おおよそ高さ1.4mで幅1.5mほどの障害物を飛んでいます。
障害物の種類も多様で、障害物の基本となる「生垣」、障害物の上部が竹で作られている「竹柵」、人工繊維でつくられた「グリーンウォール」、水路に囲われている「水溝」などです。
飛び越えるタイプの障害だけでなく、急な谷なっているような「坂路」や障害物の上部が広く上って降りるような形となる「バンケット」などもあります。
また、基本斤量も平地レースよりも重く設定されています。
基本的には、全馬60キロ前後の斤量を背負ってのレースとなります。
これには理由があり、斤量を軽くすると、障害物と障害物の間の平地部分でスピードが出過ぎてしまい、障害物飛越の際に危険だからです。
あくまでもジョッキーの安全のための措置ということですね。
障害レースは、落馬の危険性ももちろんあるので、ハラハラドキドキです。
しかし、高い障害物を颯爽と乗り越える姿が、これまた魅力的でありません。

障害レースのレース体系。G1も行われるは、障害のメッカ・中山競馬場!
障害のレースにも、平地レースのようにG1レースなどのグレードレースが存在し、海外馬を交えてのレースまで存在します。
G1レースとして行われるのは春の「中山グランドジャンプ」と、暮れに行われる「中山大障害」です。
そのほかの重賞レースとしても、阪神スプリングジャンプや小倉サマージャンプなどのレースも開催されます。
障害レースのメッカとされるのは中山競馬場です。
中山で行われる「中山グランドジャンプ」と「中山大障害」でのみ使われる高さ1.6m・幅2.05mの6号障害の大竹柵や高さ1.6m・幅2.4mの7号障害の大生垣障害は、非常に難易度が高く名ハードラーにのみが飛ぶことが出来る試練の障害です。
去年初めて中山大障害を生観戦して体が身震いするほど感動した事今でも覚えてる。その時の覇者がシングンマイケルでした。感動をありがとう。 pic.twitter.com/DpHzvlWuSd
— かおり🍺 (@5ankotoosake3) April 18, 2020
中山グランドジャンプ
シングンマイケル、最後の飛越の転倒は心臓発作だったのか..凄く悲しすぎる。ただ無事に走ってくれば良かったのですが…暮れの中山大障害の金子騎手との掛け合いは本当に素晴らしかった。これからの障害界を引っ張る逸材だったのですが…非常に残念。天国でゆっくりしてほしい pic.twitter.com/KcPe9w46hQ— 私はリンク小僧だ! (@linkyarooo) April 18, 2020
そんな難易度の高い障害を人馬一体となってクリアしていく姿は迫力満点で、各馬が障害を一つ一つクリアーしていく度に歓声が上がり、無事にゴールに辿り着けば、スタンド全体から暖かい拍手が沸き起こります。
障害レースの出走馬の魅力。平地の落ちこぼれが才能を開花!そして、騎手とともに・・・
障害レースに出走する馬たちのほとんどすべては、もともと平地レースを走っていた馬たちです。
平地のレースでは未勝利で終わってしまったり、平地のレースで成績が振るわなくなってしまった馬たちです。
これらの馬たちは、地方競馬へ転出するか、引退するかという「崖っぷちの馬」になってしまい、そういった馬たちがもう一度、競馬場で輝くことが出来るチャンスがあるというのは、非常に魅力的なことです。
希代のハードラー・オジュウチョウサンは、新馬戦・未勝利戦で負け、障害レースで開花!
例えば、現在の障害レースのトップホースの「オジュウチョウサン」は、新馬戦、未勝利戦では勝ち上がれなかった、いわば落ちこぼれのような存在でした。
しかし、障害レースに転向すると、ハードラーとしての才能が開花します。
2016年の中山グランドジャンプから障害レースではなんと負けなしです。
これはG1レースをはじめ、障害のトップクラスのレースに出走してのこの成績ですので、稀代の名ハードラーと言えるのではないでしょうか。
競馬に興味がない人も今日の中山グランドジャンプ(15時40分)は見てほしいな。
オジュウチョウサンという障害競走の絶対王者がいまして。レスリングで言うと吉田沙保里、陸上だとウサイン・ボルト。まぁ、歴史的名馬です。
周りは何とか負かそうと必死でしてね。騙されたと思って現役の間に是非😄 pic.twitter.com/5Nc9S9NynF— 小林 (Kobayashi) (@knews_kobayashi) April 18, 2020
中山グランドジャンプを楽しもう!!
オジュウチョウサンの5連覇があるのか?
シングンマイケルのリベンジあるか?
メイショウダッサイで森くん初GI制覇なるか?
他の馬たちにも大注目!どの人馬も無事完走しますように! pic.twitter.com/dIskY7I1PN
— おがわじゅり (@ogawa_juri) April 18, 2020
障害レースの出走馬は専門のジョッキーとともに成長する。
人と馬のドラマが競馬の魅力の一つではあると思いますが、それがより濃いのが障害レースだと思います。
競走馬はいきなり障害を飛べるわけではありません。
障害を飛ぶ等などの障害レースに必要なことを、調教で馬に教えていくわけですが、様々な担当者によって行われることが多い平地競走馬の調教とは異なり、障害馬の場合は、基本的に主戦ジョッキーが一から付きっきりで教えていき、障害レースに出走できるまで育て上げていくのです。
そこには平地レースで戦えない馬を、「障害レースの場でなんとか再起させたい」という関係者の強い想いがあるのです。
もちろん勝負の世界ですから、その思いに応えられない馬も居ます。
ジョッキーにとっても障害レースは落馬のリスクが高く、障害レースに乗るジョッキーはほぼ障害レース専門です。
ちなみに、平地のレースと障害のレースは免許が異なります。
競馬学校を卒業してジョッキーになった段階ではどちらの免許も取得していますが、平地レースでの乗り馬が回ってこないジョッキーが障害レースに参戦するという感じです。
稀にですが、熊沢重文ジョッキーのように平地G1レースと障害G1レースのどちらも制しているジョッキーも居ますが、基本的には障害専門としてやっていくジョッキーがほとんどです。
【Happy Birthday】
本日は #熊沢重文 騎手が52歳のバースデー、おめでとうございます。京都4Rでタイセイパルサーに騎乗。武豊騎手以外で唯一、昭和・平成・令和の三元号G1勝利のチャンスがある大ベテラン。昨年は中山大障害で惜しくも2着。今年偉業達成なるか、注目です。https://t.co/RoJ3Pcdrxc pic.twitter.com/PrbX5h7yeq
— netkeiba (@netkeiba) January 25, 2020
障害レースの馬券攻略。チェックポイントと狙いどころを解説。
障害レースでは落馬のリスクが高く、馬券は購入しないという競馬ファンも見受けられますが障害レースはポイントを抑えられれば、しっかり当てられるレースでもあります。
当てるためのポイント【1】障害の飛越力をみる。
まずは障害レースのポイントとしては飛越力です。
障害レースは当然ですが、障害を飛越していくレースです。
その飛越が安定しているか、単純に障害を飛越することが上手いか下手かという事です。

飛越が上手いと落馬する確率が減少します。
またレースでの自由度も上がります。
ジョッキー心理としても、「この馬は飛越が上手だから、勝負に行こう」という風に考えられます。
逆に飛越が下手だった場合は「まずは安全に回ってこよう」という風に考えます。
当てるためのポイント【2】障害レースをこなす身体能力をみる。
次にポイントとなるのは、障害馬の身体能力です。
障害レースは平地レースとは異なり、飛ばなければなりません。
よってシンプルに身体能力の高さはアドバンテージです。
もちろんの「オジュウチョウサン」のように未勝利も勝てなかった馬が障害で覚醒するパターンもありますが、基本的には足が速い馬の方が有利です。

この身体能力を見抜くためのポイントとしては「上りタイム」です。
「上りタイム」とはレースの最後の部分のタイムのことです。
例えば「上り3ハロン35秒」という場合はレースの最後の3ハロン(1ハロン=200mなので600m)のタイムが35秒でしたという意味です。
平地のレースでも予想のポイントとなるタイムなのですが、障害レースではより意味を持ってきます。
障害レースは3000m以上の長い距離を重い斤量背負って走る過酷なレースですので、すべての馬がゴールにたどり着くころには、バテてています。
その中で速い上がりタイムを使えるということは、スタミナを含めた身体能力の証明となります。
当てるためのポイント【3】障害レースの経験をみる。
最後にレース経験です。
障害レースは特殊なレースであるため、障害レース経験は必ずプラスに働きます。
もちろん障害レース初挑戦で好走する馬もいますが、このような馬は、どちらかというと稀です。
その理由は2つほどあり、一つ目はどんなに障害調教を積んだとしても障害レースでは戸惑ってしまう事とジョッキーがレースを教えることに終始することです。
障害レースでは落馬のリスクが高いため、普段から調教に跨るジョッキーがほとんどのケースでレースに騎乗します。
そのため、まずは馬が障害レースに慣れてもらってという風に考えています。
よって障害レース初戦から好走する馬は、よっぽど障害の才能があるか、身体能力が図抜けているかのどちらかと考えて良いでしょう。
積極的に狙いたいパターン。障害レース2・3戦目と上がりタイムの速さ。
上記の理由から、障害レースのポイントから狙いたい馬は、初障害から2.3戦目で速い上がりを使えている馬です。
[st-midasibox title=”障害レースで狙いたいポイント” fontawesome=”fa-check-circle faa-ring animated” bordercolor=”#FFC107″ color=”” bgcolor=”#FFFDE7″ borderwidth=”” borderradius=”5″ titleweight=”bold”]
- 障害2・3戦目で、障害レースへの慣れが見込める。
- 速い上がりタイムを出せる。
[/st-midasibox]
ということです。
サラブレットという生き物は、基本的には憶病な生き物です。
よって、馬術の世界でも障害経験がない馬は障害を恐れて、障害の前で急に退避したり、急停止したりするものです。
競走馬がほぼ全力に近いスピードで、障害を飛べる馬というのは稀です。
障害レースを数戦こなすことで、障害への恐怖が薄れてスピードを落とさずに飛べるようになります。
また数戦で惨敗していると馬券ファンのマークも薄くなり高配当の使者となりやすいです。
もちろん障害レースを走りきる身体能力を示すために、必要なのが速い上がりタイムです。
障害レースでこそ速い上がりタイムに重きを置くべきです。
この戦略は、特に「未勝利戦」で有効です。
未勝利戦では平地で実績のある馬たちが、障害初戦で過剰人気になりやすい傾向があります。
もちろんそういった馬たちが将来的には障害レースで出世しやすいのですが、初戦に関していえば、十分負ける可能性があります。
そこで競馬ファンのマークが薄くなった、障害経験がある馬を狙い撃つことが有効です。
そういった馬たちは新聞上の馬柱だけでなく、しっかりとレース映像をチェックして飛越力を確認しておくと良いと思います。
障害レースにおける魅力的なジョッキーたち
ここでは、馬ではなく、障害専門で活躍されているジョッキーを取り上げます。
障害リーディング1位は、森一馬ジョッキー!平地レースでもマジェスティハーツの騎乗などで活躍。
2019年の障害リーディングジョッキーは森 一馬ジョッキーです。
2019.07.27 小倉8R
小倉サマージャンプ
メイショウダッサイ 森一馬騎手
1.6倍の圧倒的な人気に応えて快勝。
森一馬騎手は今年早くも障害12勝目
メイショウダッサイ号も障害3連勝で主役に対抗できる存在か。飯田祐史調教師は重賞初勝利。
おめでとうございます。 pic.twitter.com/7BT9XPSiZ2— タカヤマ ユキチャン (@mtgun) July 27, 2019
2019年は15勝を挙げました。
このジョッキーの特徴は積極的な騎乗スタイルです。
障害レースでは先行できることは非常に有利です。
まず、不慮のアクシデントに巻き込まれにくいことです。
障害を飛越する際に馬群の中で飛越するとバランスを崩した馬の被害を受けることもあります。
先行出来れば、そういったリスクとは無縁です。
またこのジョッキーは、もともと平地レースでもマジェスティハーツなどの重賞レースでも活躍している実力の持ち主です。
重賞レースでは3勝挙げていますが、今の調子で騎乗を続けていれば、G1レースを制覇するのも近い将来と思われます。
障害リーディング2位は、白原雄造ジョッキー!大舞台での活躍が目立つ。
2019年のリーディング2位は白浜 雄造ジョッキーです。
2019.12.14 中京5R 障害3歳上オープン
勝ち馬は、白浜雄造J騎乗の単勝9番人気・ボナパルト(キングズベスト×ワイドサファイア)でした。
こちらは半弟にワイドファラオがいる血統です。 pic.twitter.com/0ku80XkmFF— ジャンプレース応援隊 (@Jump_Jumpfan) December 14, 2019
このジョッキーの騎乗スタイルとしては、「馬にレースを教える」ことを最優先とするジョッキーです。
それゆえに前半は抑えて、脚を溜めるような競馬が多いのが特徴です。
障害ジョッキーとしてはベテランの領域に入るジョッキーで、馬に障害を教える技術は一流です。
それだけに馬を大切に育てるため重賞などの大舞台での活躍が目立ちます。
すでに中山大障害と中山グランドジャンプの両方を制しています。馬にレースを教えることが上手なので、馬に数戦の障害経験を積ませた後の狙い撃ちがハマりやすいジョッキーでもあります。
障害リーディング3位は、石神深一ジョッキー!オジュウチョウサンとのコンビは無敵。
2019年のリーディング3位は石神 深一ジョッキーです。
【 #中山グランドJ 新記録】
オジュウチョウサンJRA重賞13勝:テイエムオペラオー、オグリキャップ、スピードシンボリ超えオジュウチョウサン同一JRA重賞5連覇:フジノオー、グランドマーチス超え
石神深一騎手同一JRA重賞5連覇:武豊騎手、岡部幸雄元騎手ら超えhttps://t.co/go4pC7lgbI
— netkeiba (@netkeiba) April 18, 2020
「オジュウチョウサン」とのコンビで、まさに障害界で無双しているジョッキーです。
関東所属のジョッキーですが、若いころは飲酒運転で騎乗停止になったこともあるジョッキーで、乗鞍が集まらない時期もありました。
そういったジョッキーとして最悪の時期を経験しているだけに、競馬に対するモチベーションも人一倍高く、また技術的にも優秀です。
特に関東圏における競馬場での活躍が目立ち、コースへの順応性が非常に高いです。
障害レースの魅力まとめ。
障害レースの魅力は、なんといっても「馬と人の絆」を感じられる部分だと思います。
まずは、人が馬を障害レースへ向けて育てていくのですが、いつの間にか人が馬に育てられてるといったようなドラマが数多くあります。
もちろん馬券を買う上では落馬という事故も多いですが、それも含めてドラマだと思います。
特に近年では「オジュウチョウサン」というスーパースターも登場しました。
今年の中山グランドジャンプでは5連覇を達成し、また、馬券の売上も増加したとのことです。
㊗️中山グランドジャンプ5連覇🏆🏆🏆🏆🏆 pic.twitter.com/MAeVoaTsHL
— Horse Memorys (@horse_memorys) April 18, 2020
【更なる高みへ】
中山グランドジャンプの出馬表が確定。”絶対王者”オジュウチョウサンが同レース5連覇の偉業へ。勝てば障害戦16勝目、障害重賞13連勝、障害G1は7勝目。王者の連勝記録を止めるジャンパーがいるか、注目が集まります。#競馬 #keiba #オジュウチョウサン https://t.co/mEyqYBdkhl pic.twitter.com/vJvZTS2lHd
— 競馬ラボ (@keibalab) April 16, 2020
私個人としても、競馬場へ行ったら、必ず障害レースの馬券は買いますし、きちんと飛越できるか、ハラハラドキドキしながらレースを観戦しています。
競馬の新たな魅力を探るという意味でも障害レースに注目してみてはいかがでしょうか。